決断と共に終止符を
『いいか、人を見掛けで判断しちゃイカン』
青い空を見ていると、遥か空から言葉が降って来たかの様に思い出した。
小さい頃、良くしてくれたおじいちゃんの言葉。
縁も面識も無い私に、
草花の世話の仕方。
車椅子の押し方。
様々な事を教えてくれた人は、数年前に他界し、
連れ添った奥さんと同じ場所に居るのだと聞いた。
「良い人だね」
横から聞こえた声に驚き、小さな声を出してしまうが、言われた事が解り、
「はい、優しい人でした」
懐かしそうに町並みを見れば、横から感じていた視線も正面に広がる
町並みを見つめる。
日光浴を目的に置かれたベンチに腰をかけ、他愛のない話をしているのは、
「少し良いかなぁ」
そう、誘って来た彼の雰囲気がどこかヘンだったから。
母親が看護婦で仕事場であるコト。
小学生の夏休みに淋しくなり、こっそり遊びに来たコト。
それがきっかけで仲良くなった老夫婦の話。
ないしょで遊びに行っていた事がバレていた事。
始めて会った時と同じ様に優しげな雰囲気のまま、微笑み話を聞いてくれている。
何かあったのか・・
それとも、これからあるのか・・・
どちらにしても、暗い気持ちを晴らせればと思い、自分の事を話した。
「ありがとう」
外されていた視線を感じ、
「い、え・・」
視線を下に落とし、歯切れの悪い返事を返した。
少しでも気を抜くと、身体中の体温が上がり、聞こえてしまうのではないかと、
思える程大きな心臓の音が身体を支配してしまう。
ガラじゃないって、私!
焦りが脳内を支配しそうになり手が振るえだすが、遠くから呼ぶ声が聞こえ、
「検診の時間か・・」
そよ風に攫われるぐらい小さな声に、言葉を作れずにいれば、
「ありがとう、ちゃん」
「いえ」
「また、誘ってもいいかな?」
「はい。
いつでも誘って下さい」
頷き、遠ざかる背中を見送った。
いつでも誘って下さい、て、何、言ってるの私!!
先程の自分の言葉を思い出し、温度の上がっていくのが解り、両頬を手で挟む。
あぁ、もう!
今まで張り詰められていたモノが無くなり、
フッと体が崩れ落ち、だらしなくベンチに凭れた。
やっぱり、アレなのかなぁ・・・
まさか、そんなねぇ・・・・・
キラキラ光る日差しを受け、ぐったりとベンチに身をゆだねれいれば
笑いが漏れる音が聞こえ、勢い良く振り向く。
「なにかな?橘くん」
睨みと低い声で名を呼べば、
「いや、この暑いのに良く外でダラけていられる。
そう思ってな」
目を細め、笑いを隠しながら隣に腰かけた。
「そうニラむなよ」
「別にニラんでません」
一向に治まる気配の無い笑いを聞きながら、
頬を膨らまし、
「また、無茶して・・・
直りが遅くなるよ」
そっぽを向いき、呟けば
「あいかわらず、手厳しいな」
笑うから苦笑へと変え、ようやく笑いが収まる。
「ココに居ても大丈夫なの?」
膨らんだ頬を元に戻し、ため息交じりで話題を変えれば、
「今頃は練習をしているはずだ」
眼下に広がる町並みを見ながらの言葉に、
早く、テニスしたいんだろうなぁ・・・
そんな言葉を声に出しそうになり、
「日射病になってないといいね」
誤魔化す様に作り上げた言葉は再び笑いを買ったらしく、
「らしい言葉だな」
笑いを堪えながらの言葉に、不思議そうに首を傾げれば
「病院にいるからかもしれないが、
普段では聞かない言葉だな」
「そうなの?」
更に首を捻る。
「まぁ、『頑張れ』というのが普通だろうな」
「それは、私が変わった人間だと?」
再び、目を細めニラを利かすが、
「気の聞くというコトなだ」
微笑まれ、言われた言葉に
「それは・・・どうも」
視線を外し、曖昧な言葉を返す。
真上に太陽が来る頃、屋上から離れ、
『橘 桔平』のプレートが貼られている部屋へと入る。
初めての時同様、窓側に用意されたイスに座り昼食を取る。
尽きない話
途切れる事の笑い声
昼食の時間が終わり、それも話をしていれば、
テニス部の子達が見舞いに訪れ、更に賑やかになる。
今日の練習メニューはコウだった。
苦手だったものが少し出来るようになった。
楽しそうに笑い、
からかわれて、怒って、拗ねて、そして声を上げ笑う。
2人の小さな笑いが、大きな声となり、部屋が明るくなる。
ゆっくりと太陽が傾きかけ、姿を隠そうとする頃、
『明日も来ます』
そんな声の中
「私も帰るよ」
座っていたイスから立ち上がり、手を振り
廊下で待っている2年達に紛れ廊下を歩く。
雑談を聞きながら歩く中、何かを感じ、
足を止め、恐る恐る振り返る。
「センパイ?」
横に並んでいたが足を止めた事を不審に思い、
声をかけるも、振り向いたままの姿に、
「どうしました?」
隣に立ち、の見ている先を見渡すが、
何も変わった事は無く、不思議そうにの顔を見れば、
「う〜ん・・・
思い過しだったみたい」
ごめんね
苦笑いをし、隣に居る杏へと誤りを入れ、
歩くように促す。
本当になんだったのかねぇ・・・
感じたのは視線
痛いぐらい突き刺さる視線を感じた。
と、思うんだけど・・・
振り向き感じた先にはダレも居なかった。
引っかかりを感じながら病院を後にすれば、
「センパイはこの後、予定とかありますか?」
部活から直に着たのか、男性軍の方には大きなバックが掛かっており、
セーラー服姿の杏がまっすぐな視線で問いかけてくる。
「コレと言って無いんだけど」
視線を合わし、返事を返せば
「じゃぁ、私達と一緒にストテニに行きませんか?」
「すとてに?
あぁ、ストリートテニスね」
略された言葉に疑問を浮かべるも、言葉にすれば
難なく略された言葉の場所が解り、頷くと、
杏が微笑みながら頷く姿を見るが、
「やめとくわ」
「ダメですか?」
「夕御飯を作らないとダメなのよ・・・」
「そうですか・・・」
残念そうに俯く杏に
「ごめんね、今度誘ってね」
断る言葉に、顔を挙げ、
「はい」
笑顔で頷き、違う話をするにも、
分かれ道に差し掛かり、手を上げ合い別れを告げ、
1人家へと向かう。
視界に入るのは、夜道を照らす街灯と夜空
キラキラと光る星が1つ目に入れ家へと入った。
長い針と短い針がぐるりと周り、
キラキラと光っていた星が太陽に変わる。
まぶしいぐらいの光を降り注ぎ、木々からは蝉の声が聞こえる。
塀に沿って伸びるヒマワリは太陽に顔を向けていた。
まっすぐと見上げているヒマワリの下で、
水を撒きをしていたは、ふっと視線を上げると、1人の少女を捕らえる。
あの子は、橘くんの・・・
病院内に入って行く姿を見、
あぁ、と納得し、
カラになった水を汲みに水場まで歩く途中、
名を呼ばれ、振り向けば、早足で自分の元にかけてくる、2年生達だった。
「こんにちわ」
笑顔と挨拶をすれば、一斉に挨拶が返る。
元気だコト・・・
心の言葉に苦笑し、
何をしているのかと解いてくる神尾に答えれば、
「手伝います」
と、笑顔で言われ、
じゃぁ・・
と、バケツを手渡し、水を待っているヒマワリの元へ歩いて行く。
気を使っているのね・・・
ふざけ、笑いながら水撒きを手伝ってくれる姿を見ながら、
心で思う。
直ぐにでも、会いに行きたいんだろうなぁ・・・
1人の少女が彼らより早く、病院へと入って行くのを、
どこかで見ていたのだろう。
2人の時間を邪魔しない為の気遣い。
優しい子達よね・・・
テニス部の経過を知っている者は様々な意見や、
個人的な判断で色々コトを彼らに言ってきた。
それでも、テニスが好きだから、人の意見や偏見に負けない。
強い子達だと思う。
自然と微笑み、楽しそうにしている姿を見ていれば、
聞こえた言葉に、笑みが一瞬に消えた。
振り向けば、自分が上に立っているかの様な視線、
釣り上がった口端は嫌悪感を感じるには十分だった。
笑っていた顔が怒りに変わり、今にも飛び掛ろうとする神尾を、
石田が力で抑え、伊武が言葉で静止をかける。
嫌味を含んだ言葉と視線は止むことが無い。
神尾を押さえ込んでいる石田にも、必死で耐えている森も内村も桜井も
皆、拳を作り、爪が皮膚を食い込んでいる。
「いい加減にしなさい」
今までに出したことの無いような、硬い声で言葉を作り上げ、
彼ら、不動峰テニス部の前に立つ。
神尾に向いていた視線と言葉が自分に向けられる。
冷静になり、言葉を聞き取ればくだらないコトだった。
「確かに、この子達は試合に負けた。
それは変えられない事で、勝ったのは貴方達」
まっすぐ相手の顔を見て、言葉を切り、息を吸い込む。
見えるのは、一人の男と後ろにいる数人の制服を着た人物。
「だからと言って、次に試合をして君達が勝てる保障はどこある?
君達は強いかもしれない。
でも、この子達は、君達に負けない強さを持っている」
1つ1つの言葉を丁寧に作り上げ、言葉にしてゆく。
自分の考えを伝える為に。
やまない、言葉に様々な感情が消え、
1つの確信が生まれる。
「次の試合、勝つのは、この子達。
不動峰よ」
作り上げた言葉に、後ろに居た子達が驚く気配を感じる。
そして、前からはクスクスと笑う声
再び、息を吸い、言葉を声に出そうと、口を開けるが、
「何をしている?」
横からかけられた言葉に、首を動かせば、
パジャマ姿の人物が立っており、
「部長!」
そんな言葉が耳に入った。
部長?
彼が?
彼らの?
嬉しそうに駆けていく姿を見を呆然と見る。
先ほどの雰囲気を消し去り、子供の様に笑う顔は
紛れも無く、慕っている事が解る。
後ろに居た人物も雰囲気が変わったのが解る。
それほど、影響力がある人物。
心が真っ黒になり、冷たくなるのを感じる。
分かっていた思いは、恥ずかしくて認める事が中々出来なかった。
それでも、会えば、上がる体温やドキドキする心臓がイヤでも、
自分の思いを訴える。
私は彼が好きなのだと。
無意識に視線で追い、自分が見たことの無い表情や仕草を
見るのが嬉しかった。
彼の事で一喜一憂する自分が恥ずかしくもあった。
でも、嬉しさが、断然勝っていた。
それが・・・・
『いいか、人を見掛けで判断しちゃイカン』
空から降ってきた言葉は、このコトを言っていたのだろう・・・
本当に、そうだね・・おじいちゃん・・・
目が熱くなり、涙が溜まるのを感じ、
大きな深呼吸をし、彼らを見つめる。
何か、言われているのが分かり、返事を返す。
声が脳に届かない。
分かるのは、去り際に視線を向けられたコト。
アレは何を意味していたのだろう?
動かない脳で考える・・・
そこから先の事は覚えていない。
気が付いたら、橘が隣に立っており、
「立海に啖呵を切ったそうだな」
いつの間にか握っている缶から冷たさが伝わり、
ゆっくりと、聞きなれた声が理解できた。
「そう・・・啖呵切ったんだ」
浮かんでくる言葉を声に乗せると、自然と笑みが出てきた。
「だって、ヘンな事ばかり言うんだもん」
何がオカシイのか分からない、
それなのに笑いが出てくる。
「いつも勝てるとは、限らないのにね」
「本当にヘンなの」
自分の声だけが聞こえる。
「は幸村の事が好きなんだろ?」
黙っていた橘が、作り出した言葉に笑いが止まる。
「好き・・・だったのかもしれない」
頷く事も出来ず、今だ迷い続ける心を言い表す。
「たぶん、好きだったんだと思う」
言葉に表せば、迷いが少し晴れてきた。
「うんん、好きだよ」
今までの迷いがウソの様に、簡単に答えが出てくる。
「歩いてれば、彼を探して。
見つけると嬉しくて、ドキドキした」
思い出す自分の姿は、立派に恋をしている自分。
「コレって恋で・・・好きで、合ってるよね?」
ふいに生まれてくる不安に、確かめれば、
困った様に
「俺には分からないが、ソウなんじゃないか?」
「そうかなぁ」
うねり出す不安に、言葉が信じられない
「まぁ、無意識に探してしまうのは分かるな。
見つけて嬉しくなるのは一緒だが、ドキドキは・・・
男としては、ある方が変だと思うが」
心底困った表情と言葉に、不安が消え、笑みが出る。
「確かに、橘くんがドキドキしてるのって想像できないよ」
笑いが出て、目から涙が出始める。
「もうダメかもしれない・・」
涙が頬を伝うのが分かる。
「ゲンメツされた」
甲で涙を拭くが、上手く呼吸が出来ない
「どうして、ソウ思うんだ?」
上から降ってくる、柔らかな言葉に
「立海の事、悪く言ったの・・・
次に試合をすれば、勝つのは不動峰だと、
本当にソウ思ったの」
涙腺が壊れたかのように、大粒の涙が流れる。
「もうダメだよ・・・」
優しい、視線を感じる
「嫌われたくないよ・・・
これ以上嫌われるぐらいなら、好きにならない」
両手で服を握り締め、奥底から出てきた思いを言葉にすれば、
心の頭もカラッポになり、言葉が浮かばず泣き続けた。
時折、漏れそうになる鳴き声を必死に噛み殺した。
涙が出なくなるまで泣いて、
1つの決心をすれば自然と涙が止まり、顔が上げられた。
見えるのは、心配そうに様子を伺う表情。
「私、恋した事を無駄にしたくない」
にっこり笑って言えた言葉
「良い経験だった。
そう思いたいし、これからの参考にしたい」
「そうか」
大丈夫と思ったのか、真剣に頷く橘にも頷き
「今は無理かもしれないけど、
いつか、そう思いたい」
頑張るよ
微笑み、ガッツポーズを作ったに
「頑張れよ」
応援する声をかければ、
「あ、そろそろ夕方になるから、病室に戻らないと」
いつもの様子に戻せば、
「そうだな」
橘も、いつも通り頷き、病室へと戻る。
途切れること無い話をしながら、廊下を歩き、
割り当てられた部屋の前で別れを告げ、
1人、歩いていれば、どこからか引っ張られ、背中に激痛を感じ、
息が詰まり、目を閉じた。
息を整えようと、体が空気を求めるが、上手く吸う事が出来ず咳き込む。
ノドの奥から、鉄の味が広がるのを感じ、
更に咳き込みをひどくした。
気管支が悲鳴を上げる中、何とか呼吸を整え、
咳が収まり、ゆっくりと目を開けると、強い視線とぶつかり、
体を後退させるが、背中に痛みを感じるだけで、自分が立っている位置は変わらなかった。
「ゆきむら・・くん」
目の前にいる人物は、幸村精市だった。
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第2話
シリアスを目指してみました。
果たして、シリアスでしょうか?大変疑問です。
予定では、後1話で終了です。
是非、幸村さんがたくさん出てきて貰える様、書きたいです。
2005 1 26